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福岡高等裁判所 昭和43年(行コ)6号 判決 1974年3月28日

昭和四三年(行コ)第五号被控訴人同第六号控訴人

一審原告

福地新一

右訴訟代理人

神代宗衛

外一名

昭和四三年(行コ)第五号控訴人同第六号被控訴人

一審被告長崎県知事

久保勘一

右訴訟代理人

安田幹太

外二名

主文

一  一審被告の控訴に基づき原判決中一審被告敗訴の部分(本件換地指定処分の違法を宣言した部分)を取消す。

二  一審原告の請求を棄却する。

三  一審原告の控訴を棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審とも一審原告の負担とする。

事実

一審原告代理人は、控訴として、「原判決中一審原告敗訴の部分を取消す。一審被告が昭和四一年九月一四日、一審原告に対し、福江市北町六八〇番二宅地807.93平方メートル(244.4坪)及び同番三宅地585.12平方メートル(一七七坪)の換地として、同市中央町六番二五号(一八街区二一画)宅地1,115.93平方メートル(337.57坪)を指定した処分を取消す。訴訟費用は、第一、二審とも一審被告の負担とする」旨の判決を求め、一審被告の控訴につき、控訴棄却の判決を求めた。一審被告代理人は、控訴として、主文第一、第二及び第四項同旨の判決を求め、一審原告の控訴につき、主文第三項同旨及び「控訴費用は一審原告の負担とする。」旨の判決を求めた。<以下省略>

理由

一一審原告主張の請求原因第一項及び第二項(さきに引用した原判決事実摘示のそれ。)記載の事実は、すべて当事者間に争いがない。

二ところで、一審被告は、換地の不照応、不適正に関する不服は、区画整理地区全域を総合して策定された不可分一体の換地計画に対する争訟としてのみ争われるべきである旨主張している。

なるほど、土地区面整理は、一連の手続によつて完成されるものであつて、これを都道府県知事が施行者となつて行なう場合についていえば、土地区画整理法六六条ないし六九条、六条によつて施行規程及び事業計画を定め、右事業計画が一旦決定せられると、格別の支障がないかぎり、その後の手続はいわば機械的に進められ、施行者としては、事業計画で定められた内容に従つて換地計画を定め(同法八六条一項)、必要があれば施行区域内の宅地について仮換地の指定をし(同法九八条一項)、右指定があつたのちは、従前の土地にある建築物等を必要に応じて移転、除却することができ(同法七七条)、最後に、換地計画にかかる区域の全部について工事が完了したのちは、遅滞なく換地処分を行う(同法一〇三条)こととなつている。しかしながら、かような一連の手続を経て行われる土地区画整理において、事業計画ないし換地計画それ自体は、区画整理地区内の宅地、建物の所有権その他の権利に直接具体的な変動をきたす効果があるものではなく、区画整理事業の進行によつて換地指定等個々的な処分がなされるに及んで、直接具体的な法律効果を発生せしめるものであることは、いうをまたない。そして、換地指定処分が、かように個人の権利義務関係に変動を生ぜしめる処分である以上、これが抗告訴訟の対象となり得ることもまた、明らかなところである。尤も、個々的な換地指定処分の取消が、必要的に換地計画の全般に影響を及ぼし、その全面的な修正を余儀なくさせる場合も想定されなくはないが、しかし、それが行政事件訴訟法三一条一項適用の問題となることがあるのは格別、それだからといつて、直ちに、個々の換地指定処分を対象とする取消訴訟が許されないものと解することはできない。

従つて、一審被告の前記主張は、採用できない。

三進んで、一審原告に対する本件換地指定処分の適否について判断する。

(一)  この点について、一審原告は、本件換地指定処分は近隣の者と比較して一審原告のみが著るしく不公平、不合理に取扱われており、土地区画整理法八九条一項に違反する瑕疵がある旨を主張している。元来、土地区画整理においては、都市計画区域内における一定範囲の土地を区画整理施行地区とし、右地区内の土地を一応全体的に把握して、これより必要な公共用地を控除し、その残地の区画、形質を整然としたうえ、整理前(従前)の土地に存した権利関係を整理後の土地(換地)に移動せしめるものであるから、かように土地の区画、形質を変更するにもかかわらず、従前の権利の対象たる土地の位置及び範囲を従前のまま存置せしめることは不可能であり、ことに、市街地において道路、公園等公共施設の新設ないし拡張がなされた場合にあつては、なおさらのことである。従つて、土地区画整理法八九条一項にいわゆる従前の土地との照応とは、同条項に定める、換地及び従前の土地の位置、地積、土質、水利、利用状況及び環境等の諸事情を総合勘案して、指定せられた換地がその従前の土地と大体同一条件にあり、かつ、区画整理地区全域にわたるすべての換地が概ね公平に定められるべきことをいうものと解するのが相当である。そうすると、指定せられた換地が、右規定に掲げられた位置、地積その他の個々的な点において従前の土地と必ずしも符合しない場合であつても、当該換地指定処分が直ちに違法とされるものではなく、それが、右諸事情を総合的に考察してみてもなお、従前の土地と著るしく条件が異なり、または、格別合理的な根拠なくして、近隣の権利者と比較して甚だしく不利益な取扱いを受けたという場合でないかぎり、いまだ当該換地指定処分を違法と目し得ないもの、と解すべきである(その反面、かような換地指定処分の結果生ずることあるべき権利者間の不均衡を過不足なく公平ならしめるため、いわゆる清算金の制度が設けられているのである。)。

(二)  そこで、これを本件の場合について考えてみるに、一審原告、山本、山村、才津及び平川ら各所有の従前の土地及びこれが面していた道路の位置、形状が原判決添付見取図(一)に示されるようなものであり、これらの土地の間口、地積及び利用状況並びにその相互の距離関係等が一審原告主張のとおりであつたこと、本件土地区画整理事業施行の結果、新栄町通りが幅員約一六メートルに拡張され、酒屋町通りが新栄町通りを貫いて延長され、新たに寿通りが設けられたこと、これらの各道路並びに一審原告及び前記訴外人らに対し指定された各換地の位置及び形状が原判決添付見取図(二)に示されるようなものであり、その各換地の間口及び地積並びにその相互の距離関係等が一審原告主張のとおりであることは、いずれも、当事者間に争いがない。

右事実関係からすれば、本件土地区画整理事業施行前においては、酒屋町通りが新栄町通りに突きあたるT字路交差点正面の位置に山本の、その左右の位置に山村及び一審原告の各従前の土地が存在していたとともに、平川の従前の土地は酒屋町通りに面して所在し、また、才津のそれは道路に面しない袋地となつていたのに、右事業施行の結果、一審原告に対して指定された換地は、新栄町通りと新設の寿通りが交わる交差点東側角地の西端より新栄町通りに沿つて23.08メートル(12.69間)離れた位置に従前の約七割にしかあたらない9.18メートル(5.05間)の間口を持ち、かつ、右角地の北端から寿通りに沿つて19.9メートル(10.99間)離れた位置に25.45メートル(一四間)の間口を持つ変型の土地であるところ、これに対し、山村については、右交差点東側角地に、新栄町通りに面して従前の約二倍にあたる17.08メートル(9.37間)の間口を持ち、かつ、寿通りに面しても相当の間口を持つ換地を指定され、山本については、右交差点西側角地に、新栄町通りに面して従前と同様の6.36メートル(3.5間)の間口を持ち、かつ、寿通りに面しても相当の間口を持つ換地のほか、寿通り沿いの、山村の右換地の南隣りに間口4.54メートル(2.5間)の換地を指定され、平川については、新栄町通り沿いの、山村の右換地の東隣り(一審原告の右換地の西隣り)に従前の約1.5倍にあたる5.09メートル(2.8間)の間口を持つ換地を指定され、才津については、寿通り沿いの、山本の右換地の南隣り(一審原告の換地の北隣り)に間口5.45メートル(三間)の間口を持つ換地を指定されているのであるから、叙上の諸点のみをとらえると、一審原告に指定された換地は、位置的にみて従前の土地と必ずしも符合せず、かつ、山村、山本、平川及び才津に対して指定された換地と比較して、多少公平を欠くかのごとくに解されなくもない。

(三)  しかしながら、他方、前記争いのない諸事実に加えて、<証拠略>を総合すると、次の事実を認めることができる。

(1)  一審原告及び前記訴外人らの各従前の土地及び付近道路の位置関係は、別紙見取図(一)に示すとおりであり、昭和三七年九月二六日に発生した大火以前の福江市においては、新栄町通りのほぼ西半部(同通りが酒屋町通りと交差する地点から、本町通り及び堀町通りと交差する地点までの部分がこれにあたる。別紙見取図(一)参照。)を中心とし、これに接する酒屋町通り及び本町通りの部分が最も商業の繁栄する場所であり、同部分の道路は幅員約7.5メートルの県道で完全舗装されており、海路及び陸路から同市に出入りする買物客の流れも、大半が右部分の通りを経由していたこと、しかし、新栄通りのうち、酒屋町通りとの交差点からほぼ東半にあたる部分は、道路幅員も5ないし5.5メートルと狭く、舗製も完全でなく、右交差点から遠ざかるにつれて商業地としての価値が低くなるような状況であつた。従つて、右交差点の東側に位置していた一審原告の土地は、右交差点正面に位置していた山本の土地及びその西側に位置している山村の土地や、酒屋町通りに面していた平川の土地に比べると、商業地としての価値がやや劣つていた。ちなみに、これを従前の土地の一坪あたり固定資産税評価額についてみても、山本のそれが金七、七五〇円と最高で、以下平川が金六、九六九円、山村が金六、八六八円、一審原告が金五、二三六円、才津が金三、六七五円の順となつていた。

(2)  しかるに、本件土地区画整理により一審原告らに与えられた各換地及び新設、拡張された付近道路の位置関係は、別紙見取図(二)に示すとおりであるところ、区画整理の結果、新栄町通りが従来の東半部をも含めて幅員約一六メートルに拡張されたうえ、その全部が舗装され、かつ、寿通りが新設されたのに加えて、一審原告の換地の前付近にはバス停留所が新たに設けられたことや、船の発着場が従前よりも東南方の位置に移され、これが完全整備されたこととあいまつて、新栄町通り東半部の人通りも次第に増えてきたため、右東半部分の商業地区としての価値が区画整理前に比較して格段に高まり、むしろ酒屋町通りをしのぐほどになつてきた。また、これに伴つて、新設の寿通りも商業地区として頭角をあらわし、別紙見取図(二)表示の、寿通り、新栄町通り、本町通り及び平和通りで囲まれる区画はもちろん、これと対面する、寿通り、新栄町通り、東町通り及び平和通りで囲まれる区画もまた、福江市内屈指の繁栄商業地区となつた。

(3)  しかして、一審被告は、本件換地計画の基礎資料となる土地の評価にあたり、通常土地区画整理事業において採用されている、いわゆる路線価式評価方法によることとし、長崎県の定めた換地交付細則(乙第二号証)に準拠して、各街路につき路線価を定めたのであるが、それによれば、従前の土地については、山村の土地の接する街路の路線価指数が市内でも最高の一、〇〇〇、以下山本のそれが一、〇〇〇及び八七三、平川のそれが八八五、一審原告のそれは八七三となつていた。また、指定せられた換地についても、区画整理事業施行の結果による状況を想定、勘案して、そのそれぞれの路線価を定めたのであるが、それによると、山本に指定された換地の接する街路の路線価指数が一、二六七(新栄町通り)及び九八八(寿通り)、山村のそれが一、一六九(新栄町通り)及び九八八(寿通り)、平川のそれが一、一二五(新栄町通り)、才津のそれが九八八(寿通り)であるのに対し、一審原告のそれは一、一二五(新栄町通り)並びに九八八及び七六五(寿通り)となつている。そして、一審被告は、右路線価を基礎に、本件土地区画整理地区内の各筆につき、奥行修正などの修正を施して、評定価額を算出し、各筆の従前の土地と換地との評定価額が概ね照応するように考慮して各換地を指定したが、これを一審原告の場合についてみれば、従前の土地の評定価額は金一八五万九、六〇四円、換地のそれは金一八三万七、〇五六円であつて、その差額金二万二、五四八円が清算金交付額となつているが、本件土地区画整理事業の施行にあたつては、右金額程度を生じた例は、他にも少なからず見受けられた。

(4)  ところで、一審被告は、本件土地区画整理事業を施行するにあたり、原則として、従前の土地の位置に照応するよう換地を指定したが、土地の区画、形質の変更及び公共施設の新設または変更に伴ない、いわゆる飛換地を行うなど、従前の土地の位置と必ずしも符合しない換地を指定せざるを得ない事例も少なからずあつた。その事情を本件で問題になつている各筆の土地の場合にかぎつていえば、次のごときものであつた。

(い) 先ず、一審原告、山本及び山村の従前の土地は、山本の土地を中心にして、その東側に一審原告の、西側に山村の、各土地が並んでいたが、本件土地区画整理事業施行の結果、新設された寿通りをはさんで、西側角地が山本の、東側角地が山村の、各換地として指定され、一審原告の換地は山村の右換地の東側(ただし、平川の換地をはさんで。)に位置することとなつて、結局、従前の土地の場合に比し、山本及び山村の土地の列順が入れかわることとなつたが、これは、山本の従前の土地の方が山村のそれよりも有利な位置にあつたと認められたため(前記路線価式評価方法によつて算出した評定価額や固定資産税評価額も、山本のそれが山村のそれを上廻わつていた。)、寿通りの新設によつて生じた両側の角地のうち、やはり右方法による評価が優つている西側の角地を山本の換地として指定し、やや劣る東側の角地を山村の換地として指定したものにほかならない。そして、山村に対しては、その結果生ずる不利益を補うため、新栄町通りに面する間口を従前のそれよりも広く与え、均衡を保つよう配慮された。

(ろ) 次に、平川については、その従前の土地が酒屋町通りに面していたのを、新栄町通りに面して飛換地せられたが、それは、右従前の土地の属していた区画が道路拡張の影響でかなり狭められた反面、一審原告の換地の属する区画(寿通り、新栄町通り、東町通り及び平和通りで囲まれた区画。別紙見取図(二)参照。)が道路移動の結果(東町通りが東方に移動した。)区画整理前より若干広くなつたところより、右区画に平川の換地を指定することとし、同訴外人の従前の土地の方が一審原告の従前の土地より有利な位置にあつたと認められたため(前記路線価式評価方法による評定価額や固定資産税評価額も、平川のそれが一審原告のそれを上廻わつていた。)、その換地も、同訴外人が一審原告より角地に近い有利な位置に指定された。そして、同訴外人の従前の土地の間口が商業地区のそれとしては狭あいにすぎたため、公共施設の整備改善とともに土地の利用増進をはかるべき土地区画整理事業の目的にてらし、従前の土地より広い間口が与えられた。しかし、それに伴つて、一審原告の換地が、新栄町通りを標準としていうかぎり、従前の土地に比して、酒屋町通りとの交差点から離れた位置に指定され、しかも、その間口は減少せざるを得ないこととなるため、一審原告に対しては、新栄町通りに面した右間口のほか、寿通りに面して25.45メートル(一四間)の間口を持つた換地の指定をし、均衡を保つよう配慮された。

(は) また、才津については、従前の土地は袋地であつたが、土地区画整理事業における前記目的にかんがみ、これに対する換地は道路に面した位置に指定すべきものと判断されたところ、元来、右土地は一審原告の従前の土地より分筆されたという沿革があるところより、付近に新設された寿通りに面し、かつ、一審原告の換地と並んだ位置に換地指定されることとなつたが、その反面、同訴外人に対しては、その地積は七一平方メートル(21.48坪)という狭あいなものであるのに、あえて減歩率を他よりも大きくし、かつ、清算金二万八、六〇二円をも徴収して、均衡を保つよう配慮された。なお、同訴外人に対する換地が、一審原告に対する換地よりも角地に近く指定されたのは、もし右訴外人の換地を一審原告の換地の南側(角地より遠い位置)に指定すれば、一審原告の換地が不整形なものとなるところより、これを避けて、一審原告の換地について形状を整え、その利用増進に資そうとしたためにほかならない。

(に) なお、右各換地の減歩率についていうと、従前の土地に対する換地の面積は、山本が約0.86倍、山村が約0.83倍、才津が約0.75倍、平川が約0.88倍、やはり近隣の訴外有川二郎吉が約0.80倍、同樋口秀雄が約0.88倍であるのに対し、一審原告は約0.80倍であり、この点に関して、一審原告がことさら不利益な取扱いを受けたことはなかつた。

以上の事実を認めることができる。<排斥証拠略>

(四)  そこで、右認定の事実関係に立脚して、本件換地指定処分の適否を考える。なるほど、一審原告に対して指定された換地は、新栄町通りに面した間口のみについていうかぎり、その従前の土地と比較して、酒屋町通りとの交差点(角地)よりかなり東側に遠ざかり、かつ、従前の間口を約三割減少されているけれども、他面、右従前の土地の存した新栄町通り東半部は、本件土地区画整理事業に伴なう道路の整備、拡張によつて、その商業地としての価値が格段に高められており、該価値増加の度合いは新栄町通り西半部や酒屋町通りのそれをはるかにしのぐものであつたと目されるうえ、従前みられたごとき、右交差点から遠ざかるに従つて商業地としての利用価値が著るしく低落するという現象も解消されるに至つているのであつて、これを要するに、当該街路区画自体に認められる、商業地区としての利用価値の増加によつてもたらされる利用をも参酌すれば、右交差点より東側に遠ざかり、かつ、その間口が約三割減少したことによる不利益がほぼ補われたものと解し得べき事情にある。そればかりでなく、右換地は、新栄町通りに面して与えられた右間口のほか、新設された寿通りに面して25.45メートル(一四間)という広大な間口が与えられているのであつて、右換地の価額と従前の土地のそれを前記路線価式評価方法に基づく評価額によつて比較してみても(前記認定した諸事情にかんがみれば、本件土地区画整理事業の施行にあたつて、右路線価式評価方法に依拠したのは、合理的であつたと認められる。)、彼我の間には殆んど差の存しないことが明らかである。しかして、右説示した諸点のほか、前記認定した諸事情をかれこれ総合勘案すれば、本件土地区画整理事業において一審原告に指定された換地は、その従前の土地と概ね同一の条件にあるものというを妨げず、しかるときは、一審原告主張のように、右換地が従前の土地に照応しないものと断じ去るわけにはいかない。

尤も、一審原告は、本件換地指定処分については、近隣の山本、山村、平川及び才津らに比較して、一審原告のみが著るしく不公平に取扱われている旨主張している。しかし、前記認定したように、もともと山本、山村及び平川の各従前の土地は一審原告の従前の土地より商業上有利な位置にあつたのであるから、同訴外人らの換地が一審原告のそれよりも有利な角地もしくは角地に近い位置に指定されたのは、むしろ当然のことであるし、同訴外人らの換地の間口及び形状が一審原告主張のごとくに定められたのも、前記認定したとおりの事情によるものであつて、いずれも合理的な根拠に基づくものであることが明らかである。のみならず、これによつて生じた不均衡は、清算金によつて調整されているわけでもあるから、右訴外人らが一審原告よりも著るしく有利に取扱われているものとは認めがたい。また、才津についてみても、前記認定したとおり、土地区画整理の目的にかんがみ、土地利用の増進をはかる趣旨で、従前の袋地を新たに道路に面するように換地指定されたにすぎず、その反面、地積の割りには減歩率を大にしたり、あるいは清算金を徴収するなどの方法によつて、均衡の保持をはかつているのであるから、同訴外人のみが不当に有利な取扱いを受けたともいいきれない。

四叙上説示してきたところによれば、結局、一審原告に対する本件換地指定処分が、土地区画整理法八九条一項の規定に違反する違法な処分であるとは認めがたいので、一審原告の本訴請求は、その余の争点について判断するまでもなく失当であつて、これが排斥を免れない。

よつて、これと一部結論を異にする原判決は失当であるから、一審被告の控訴に基づき、原判決中一審被告敗訴の部分(本件換地指定処分の違法であることを宣言した部分)を取消して、一審原告の請求を棄却すべく、一審原告の控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(佐藤秀 麻上正信 篠原曜彦)

<別紙見取図(一)(二)省略>

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